「もう、棺桶に入るまで日本酒はずっと飲んでいきたいなって思ってるので」

6蔵との乾杯リレーを飲みきった大橋彩香さんの総括に、隣の久慈社長が本気で目を潤ませた。「もうどうしよう、涙出てきちゃいます、本当にもう。酒蔵冥利につきます」──2026年10月18日(日)17時30分、東京ポートシティ竹芝。全国の42蔵・156銘柄が集った超吟醸祭2026、2日間・全6部のトークショーを締めくくる最終部のステージだ。

テーマは「いい声と酒を浴びろ」。日本酒を愛してやまない"いい声"のゲストを迎えるトークショーの大トリを任されたのは、『アイドルマスター シンデレラガールズ』島村卯月役などで知られる声優・アーティストの大橋彩香さん。事前インタビューでスパークリングから熱燗ペアリングまで日本酒の幅を一気に広げた彼女が、今度は西日本の個性派6蔵と向き合った90分の記録である。進行はフリーアナウンサーの竹内里奈さん。乾杯トークショーは琉球酒豪伝説の協賛で行われた。

第6部に登壇した大橋彩香さん(10月18日・東京ポートシティ竹芝)
第6部に登壇した大橋彩香さん(10月18日・東京ポートシティ竹芝)

「7時間半、お酒とカラオケ」──幕開けから酒豪伝説

登場した大橋さんは「まだシラフなんで」と笑いながら、すでに出来上がりつつある客席を見渡した。「楽屋にモニターがあって、皆さんの様子が見えていたんですけど、カバンから1リットルのお水のペットボトルを出されてる方もいて。皆さんの本気度がうかがえて、早くそちらに行きたいなーって思っておりました」

協賛の琉球酒豪伝説にちなんで「ご自身の酒豪伝説的な一面は」と聞かれると──「私は二次会でカラオケに行くことが大好きなんですが、私のカラオケのお供は絶対、お酒でございまして。この間は友達と二人で、7時間半、お酒とともにカラオケで歌いました」

同じく声を使う仕事の竹内さんが「7時間半はちょっと恐れ入りました」とのけぞると、「翌日も喉は大変元気でございまして。カラオケとお酒の親和性は大変高いなと感じております」。幕開けから伝説の風格である。

憧れだった鏡開き──「これからライブで毎回やりたい」

ステージは日本吟醸酒協会・島崎理事長の挨拶から。「現在、加盟蔵42蔵。長きにわたり吟醸酒を一生懸命つくり続けている蔵が集まっております。45年続く、非常に歴史のある協会でございます。今日は北は秋田、南は大分までの蔵元が自慢の吟醸酒をたくさん持ってきておりますので、ぜひ蔵元と交流しながら、存分に吟醸酒を楽しんでいただければ」

開催を祝う鏡開きが告げられると、大橋さんは「やったー!憧れていたんですよ。人がやってるのは見たことあるんですけど、いいなって思っていたので」と目を輝かせた。本田商店、高橋商店、一宮酒造、西山酒造場、八鹿酒造、山村酒造──この日のステージに登場する6蔵の蔵元が、大きな樽と大橋さんを囲む。

ここで紹介されたのが、南部美人(岩手)の久慈浩介社長だ。「私はですね、去年までこの吟醸酒協会の理事長をしておりまして。任期で退任して、やっと仕事終わったなと思ったら、このMCはお前がやると。しかもボランティアでやると。ノーギャラで2日間、昨日から1、2、3、4、今日のこの6部まで、全部やらせていただいております」。このぼやきはもちろんつかみの冗談で、実際は昨年まで協会を率いた蔵元きっての語り手。この後の乾杯リレーでも、各蔵の酒と造りにそのつど専門的な解説を添えていく、この祭典の解説役である。

南部美人・久慈浩介社長

🎙 この祭典の解説役

「南部美人」(岩手・二戸)の五代目蔵元・久慈浩介社長。昨年まで日本吟醸酒協会の理事長を務め、超吟醸祭2026では2日間・全6部のステージに立ち続けて、各蔵の酒と造りをその場で解説した。

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写真出典: 南部美人公式サイト

掛け声の「よいしょ、よいしょ、よいしょ」には、久慈社長から注文がついた。「大橋さんがライブやってるとき、コールするでしょ。そのコールと同じぐらいの音量でいいですか。大橋さんに後でチェックしてもらいますからね」。会場一体の掛け声で樽が開くと、大橋さんの判定は「素敵でした。合格です」。

登壇6蔵に囲まれて、憧れだったという鏡開き
登壇6蔵に囲まれて、憧れだったという鏡開き

「迫力がすごかったです。皆さんの声と、ガチャンって音がすごくて。これからライブで毎回やりたい」と大橋さん。「ライブ会場に怒られるかもしれません」と竹内さんが笑うなか、久慈社長は「すぐに吟醸酒協会で協賛させていただきます」と前のめり。「じゃあ、ぜひ枡で」「枡でドリンクを」と、ライブ×鏡開き構想が勝手に具体化していった。

当日の投影スライド: 第6部 出演: 大橋彩香/登壇酒蔵: 本田商店・高橋商店・一宮酒造・西山酒造場・八鹿酒造・山村酒造
当日の投影スライド: 第6部 出演: 大橋彩香/登壇酒蔵: 本田商店・高橋商店・一宮酒造・西山酒造場・八鹿酒造・山村酒造

当日、会場の大型スクリーンに投影されたスライドとともに、登壇順に振り返っていく。

一蔵目・本田商店「龍力」──「私が山田錦です」

投影スライド: 一蔵目 本田商店(兵庫県)登壇酒: 龍力 大吟醸 米のささやき YK35 荒走り「金賞受賞酒」袋搾り斗瓶取り 生
投影スライド: 一蔵目 本田商店(兵庫県)登壇酒: 龍力 大吟醸 米のささやき YK35 荒走り「金賞受賞酒」袋搾り斗瓶取り 生

リレーの先頭は、兵庫・姫路の本田商店(1921年創業)。「龍力(たつりき)」の五代目・本田さんは、名乗りからして強烈だった。「兵庫は山田錦っていう酒造り専用のお米の大生産地でして。その真ん中にありますから、じゃあ地元の蔵がいちばんええ米使おうやないかと。山田錦にとことんこだわる蔵元でございます。だから──私が山田錦です」

「今日から山田君になってください」とすかさず返され、呼び名はあっさり「山田君」に決まった。

持ってきたのは、今年の全国新酒鑑評会で金賞を受賞した「米のささやき」。金賞はこれで8年連続だという。「ひらがなを使ったラベルは、調べてみると日本で初めてだそうです」と本田さん。

ラベルの「YK35」の文字に大橋さんが「ここに呪文みたいに書いてあるのは何ですか」と食いつくと、久慈社長が「これね、実は業界を変えた大切な呪文」と引き取った。Y=山田錦、K=熊本酵母(9号酵母)、35=精米歩合35%。かつて鑑評会の金賞を量産した方程式だ。「飲み屋さんに行ったときに『YK35あります?』って聞くと、ちょっと知ってる人だと思われますね。すごく通に見られます」と本田さんが言えば、大橋さんは「トレンド用語として覚えておきます」。

話は山田錦の聖地・特A地区の吉川(よかわ)の土壌にまで及んだ。「だいたい4000万年前から300万年前にできた、まだ日本が大陸にくっついていた頃の話なんですけど、その頃にできたものが、いい栄養分、いいミネラルを残してくれている」「土壌って人間の骨格なんですよ。骨格の形がお酒の決め手になるんじゃないかな」。久慈社長も「ワインでも同じような土壌があって、ボルドーがよく似てます」と解説を重ねる。さらに「冷やして飲んでおいしいお酒って、つくり方にポイントが一つあるんですよ。冷やして飲んでおいしい温度で発酵させること。5度か10度くらいで飲んでほしければ、5度か10度で発酵させればいい。生まれたときの温度帯がいちばんおいしいのではないかな」と、日本酒歴史講座さながらの語りが続いた。

大橋さんは「どんどん日本酒の解像度が上がっていくといいますか。今なんてもう歴史を感じているわけでありまして。あと、やっぱりお話が上手すぎて」と笑う。山田錦と神力(しんりき)を掛け合わせた酒米の自社開発も「交配実験から始めて12年」。「うちの蔵、オタクなんですよ。ぜひオタクな蔵、飲んでください」

大橋彩香さん

🍶 この一杯、どうでした?

龍力 大吟醸 米のささやき YK35 荒走り「金賞受賞酒」袋搾り斗瓶取り 生(本田商店/兵庫・姫路)

「いや、ごくごくいけます」「華やかです」

本田商店との乾杯
本田商店との乾杯

一蔵目が退場すると、久慈社長がぽつり。「この最後のターン、癖強い蔵元が揃っちゃってまして。お許しください」「どうしてこんな揃いになっちゃったんだろうっていうくらい癖が強いので」。大橋さんは「楽しいです」と即答し、乾杯リレーは加速していく。

ステージの大橋彩香さん
ステージの大橋彩香さん

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二蔵目・高橋商店「繁桝」──電車の通らない町で300年

投影スライド: 二蔵目 高橋商店(福岡県)登壇酒: 繁桝 大吟醸しずく搾り
投影スライド: 二蔵目 高橋商店(福岡県)登壇酒: 繁桝 大吟醸しずく搾り

続いては福岡・八女市の高橋商店(1717年創業)。約300年続く「繁桝(しげます)」の蔵だ。「八女市といえば八女茶。あとは伝統工芸とか。電車も通ってない、そういう場所になります」と社長。「人口は約6万人いるにもかかわらず、地元の人たちが電車を通させなかったみたいな」という土地柄の紹介に、久慈社長が「うち、2万2千人の街だけど新幹線の駅あるよ」とすかさず対抗して会場が沸いた。

登壇酒は「繁桝 大吟醸しずく搾り」。原料米の説明は、少し言いづらそうだった。「これ、なんか言いづらいんですけど、山田錦をですね……」──直前に"私が山田錦です"と名乗った男の後である。「最初にそれ言っといてくれたら、ちょっと選ぶお酒変えたんですけど」とこぼしつつ、「福岡には糸島という、すごく気候のいい場所があります。その糸島でつくられている、すごくいい山田錦です」。

アルコール度数は17度とやや高め。「それを軽くスイスイいかれるのが素晴らしい」と社長が舌を巻く飲みっぷりで、大橋さんは「後味がとっても甘い。でもちょっとピリッともするんですけど──なんだろう、後味がすごく好きです」。

ペアリングの話題では「福岡は食の都とも言われてまして。もつ鍋とか水炊きとか、明太子があったり」と社長。「すいません、明太子大好きなんです」と大橋さんが反応すると、久慈社長から「送らないと、後で」と営業指導が飛んだ。

実はこの日の一本、「箱入り娘」という銘柄と最後まで迷ったという。「大橋さんと近くになって、箱入り娘のほうがなんとなく良かったのかなと思いつつ」と社長はすっかり上機嫌。最後は「九州って焼酎のイメージが強いと思うんですけど、福岡は実は全国で5番目に酒蔵が多くて、57蔵あるんです」(久慈社長「岩手は21しかないですよ」)、「でも生産量は全国で25番目という微妙なところなので、ちょっと皆さん応援してください」と締めた。

大橋彩香さん

🍶 この一杯、どうでした?

繁桝 大吟醸しずく搾り(高橋商店/福岡・八女)

「後味がとっても甘い。でもちょっとピリッともするんですけど──なんだろう、後味がすごく好きです」

高橋商店との乾杯
高橋商店との乾杯

三蔵目・一宮酒造「石見銀山」──麹室のプレイリストに大橋彩香

投影スライド: 三蔵目 一宮酒造(島根県)登壇酒: 石見銀山 純米大吟醸
投影スライド: 三蔵目 一宮酒造(島根県)登壇酒: 石見銀山 純米大吟醸

元気いっぱいにステージへ走り込んできたのは、島根・大田市の一宮酒造(1896年創業)。まもなく創業130年、世界遺産・石見銀山のまちの小さな蔵だ。「こう見えても酒づくり、ちゃんとやっております。杜氏の浅野理可といいます」。会場入り口のタペストリーには蔵のマークとともに手書きのサインが入っていて、久慈社長いわく「彼女がなんてサインを書いたかというと、『理可でーす』って書いてあるんですよ」。本人は「帰りにぜひ見て、写真撮ってインスタにアップしてください」とちゃっかり宣伝も忘れない。

登壇酒は「石見銀山 純米大吟醸」。島根県にしかない酒米「改良八反流」を使った一本だ。「とにかく私たちは、楽しくお酒を飲んでもらいたいなっていう思いがいちばん強いので。我々も楽しく音楽を聴いたりしながら、お酒をつくってます」

乾杯の第一声は、この日いちばんシンプルだった。「甘い! おいしい!」

音楽を聴きながらの酒づくりが気になった大橋さんが尋ねると、「麹づくりって、30度35度くらいの部屋で、ずっと同じメンバーで作業するんですよ。最初はみんな疲れた〜みたいな感じでやってたんですけど、それじゃダメだってことで、好きな音楽を聴こうと。日替わりで『今日誰の曲聴く?』って」と浅野さん。すかさず久慈社長が「大橋彩香の楽曲もかけたら、もっと楽しさが出る気がするんで。おすすめです」と営業すると──「来週から今シーズンの酒づくりが始まるんで、プレイリストに入れさせてもらいます」。今季の石見銀山は、大橋彩香を聴きながら醸されることが決まった。

ラベル談義では「黒地に赤でかっこいい」と大橋さん。石見銀山は来年、世界遺産登録20周年を迎える。ブースに残るのは「もうこのお酒、あと1本だけ」とのことで、最終部まで来た人気のほどがうかがえた。

大橋彩香さん

🍶 この一杯、どうでした?

石見銀山 純米大吟醸(一宮酒造/島根・大田)

「甘い! おいしい!」「楽しさがすごい詰まったお酒だなって思いました」

一宮酒造との乾杯
一宮酒造との乾杯

退場後、久慈社長がオンマイクでこっそり明かした。「彼女ね、ここに出てくるまで『どうしようどうしよう、本物の隣にいて、どうしよう』ってすごく緊張してたんですよ」。実は大橋さんの出演作を見ているファンでもあるそうで、楽しげなステージの裏にそんな一幕もあった。

四蔵目・西山酒造場「小鼓」──後味が、桃

投影スライド: 四蔵目 西山酒造場(兵庫県)登壇酒: 小鼓 純米大吟醸 桃花
投影スライド: 四蔵目 西山酒造場(兵庫県)登壇酒: 小鼓 純米大吟醸 桃花

「僕、ここでたぶん一番笑っていただけると思うんですけど──西山酒造場の、西山しゅうぞうと言います」。兵庫・丹波の西山酒造場(1849年創業)、六代目の名乗りは、アルファベットで書くと社名と同じ「Nishiyama Shuzo」になるという鉄板ネタだ。「代々、何々造という名前なんですね。名前だけで実は5分持つという」

登壇酒は「小鼓 純米大吟醸 桃花(とうか)」。うっすらピンクに見えるのはお酒ではなく瓶の色で、栓はコルク。「路上に咲く一輪の花のような純米大吟醸」というコンセプトの、見た目から可愛い一本だ。「え、かわいい」と手に取った大橋さんに「持ってみてもらうと、今日のお衣装ともすごく似合いそうです」と声が飛び、ステージはミニ撮影会のような空気になった。

「世界で一番デザインに凝っている酒蔵と言われています」と西山さん。社員65人のうち43人が女性で、「全国でも一番女性比率が高いんちゃうかな。だからデザインも可愛かったりとか」。理由を聞かれて「女性の方が優秀なんですよね」と言い切り、「待って待って、男性諸君いっぱいいるから」と止められる場面も。

肝心の味は──「ちょっとピリッと感じつつも、スッと入っていく感じがあって、おいしいです」。そしてしばらくして、大橋さんがふと気づく。「後味がなんか……桃なのかな。今までにはなかった味がするなと思って」「桃だ」「桃だ」。確かめるたびに確信が深まっていく様子に、ステージも客席も笑いに包まれた。

ブースのお酒はすでに売り切れ。「じゃあ皆さん、ここで飲むのが最後の一杯」という贅沢な乾杯になった。締めの挨拶も抜かりなく──「今日は西山酒造場の西山しゅうぞうだけ、あと大橋さんを覚えて帰ってください。それで十分です」。

笑顔がはじける大橋彩香さん
笑顔がはじける大橋彩香さん
大橋彩香さん

🍶 この一杯、どうでした?

小鼓 純米大吟醸 桃花(西山酒造場/兵庫・丹波)

「ちょっとピリッと感じつつも、スッと入っていく感じがあって、おいしいです」「後味が……桃なのかな」

西山酒造場との乾杯
西山酒造場との乾杯

五蔵目・八鹿酒造──スパークリング好きを調べ上げた、とっておきの「Niji」

投影スライド: 五蔵目 八鹿酒造(大分県)登壇酒: 八鹿 純米吟醸 桃 White Bottle2026
投影スライド: 五蔵目 八鹿酒造(大分県)登壇酒: 八鹿 純米吟醸 桃 White Bottle2026

スクリーンに映し出された登壇酒は「八鹿 純米吟醸 桃 White Bottle2026」。ところが、大分・九重町の八鹿酒造(1864年創業)の麻生さんは、おしゃれな日本酒の瓶を掲げてこう切り出した。「本日お持ちしたお酒は、こちらではなく──スパークリングのお酒となります」

2日間の大好評で、登壇予定分のお酒まで来場者に提供し尽くしてしまったのだという。ただし、この1本は売れ残りではない。「残ったわけではなく、この分だけしっかり残して、お披露目のために取っておいた貴重な一本」。しかも、ただの代打でもなかった。「実はちょっと前情報を得てまして。スパークリングが大好きだと」

「スパークリング大好きです」「やったー、スパークリングだ」と、この日いちばんの歓声を上げる大橋さん。「取材のときに一番最初に飲まれたスパークリングで、新政さんの天蛙を好きになったという話を聞いてましたので」と、事前インタビューまで読み込んだ上での選酒だった。竹内さんも「事前準備、インタビューしっかり読み込んで来られましたね」。

開栓はシャンパンとまったく同じ流儀だ。「シャンパンボトルで、コルクもシャンパンのコルク、シャンパンワイヤーで。開けるのもセレモニーなんで、ぜひ見てください」。会場のカウントダウン「3、2、1」で小気味よい音が響く。「慣れてますね」と感心されると──「昨日から60本開けてます」。

その正体は、瓶内二次発酵でつくるスパークリング日本酒「八鹿スパークリング Niji」。「一度アルコールをつくって、それを再び瓶の中に入れて、もう一度発酵させるときに出るガスをボトルの中に閉じ込めています。瓶内に『二次』発酵、なので『Niji』というお名前で」──直前の西山さんに続いて、まさかの名前ネタかぶりである。久慈社長も「世界のコンテストでも非常にいい成績を取っている、今、日本を代表するスパークリングの一つ」「炭酸ガスを後から充填したものとはガスの持ちも違う。シャンパングラスに入れると、一筋の泡がすーっときれいに立つ」と太鼓判。「これも日本酒なんです。お米と水しか使ってません」

大橋さんの感想は「炭酸の刺激と華やかな甘みが絡み合って、おいしいです」。ペアリング談義ではカルパッチョの名が挙がる一方、「お塩とわさびだけで飲まれるんですよね」と、ここでも大橋さんの定番おつまみを調べ上げた事前リサーチが光った。ブースに残るスパークリングは「あと2本分ぐらい」。「皆さん、ここで飲んだほうがいいですよ」と久慈社長が笑った。

大橋彩香さん

🍶 この一杯、どうでした?

八鹿スパークリング Niji(八鹿酒造/大分・九重)

「やったー、スパークリングだ」「炭酸の刺激と華やかな甘みが絡み合って、おいしいです」

八鹿酒造との乾杯
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六蔵目・山村酒造「れいざん」──熊本最古、2時間飽きずに飲める酒

投影スライド: 六蔵目 山村酒造(熊本県)登壇酒: れいざん 純米吟醸
投影スライド: 六蔵目 山村酒造(熊本県)登壇酒: れいざん 純米吟醸

大トリは熊本・阿蘇の山村酒造(1762年創業)。阿蘇で264年、熊本で稼働している中では最古の蔵だ。標高550メートル、南国九州にあって冬はマイナス10度以下になる土地で、昔ながらの寒造りを続けている。

実はこの蔵、進行役の竹内さんにとって特別な存在でもある。「私、NHK熊本が最初に勤めた局なんですけど、日本酒を好きになったきっかけ、実は『れいざん』なんです。当時の上司が初めて『これは』っていうお酒を教えてくれたのが、れいざんで」

蔵元はまず、先日の熊本の地震に触れた。「全国の皆さんからご心配とか励ましの声をいただきまして、本当にありがとうございました。おかげさまでうちの蔵はほぼほぼ被害なくやっておりますけれども、熊本もまだまだ大変なところもあって。特に飲食店さんが苦労されているところも多いので、ぜひ皆さん、この機会に熊本、バンバン飲みに行っていただければなと思います」

登壇酒は「れいざん 純米吟醸」。地元産の山田錦を50%まで磨き、熊本酵母で醸す。「華やかさというよりは、穏やかに飲んでいただける感じ。よく『2時間飽きずに飲める酒』だと言っていただきます。日本酒バーで華やぐ酒というよりは、ご飯を食べながらずっと飲むタイプの、ある意味クラシックなお酒ですけども、飲み心地の良さは自信があります」。今も8割は熊本県内で飲まれている地元の酒だ。

大橋さんの感想は、この日屈指の名コメントだった。「なんか熟成された感じがする。長年寄り添ってくれる安心感のようなものを感じます」。そしてグラスを重ねて、「おいしい! 好きだこれ」。蔵元が「燗をつけても味の輪郭がはっきりする。これからの季節、温かい鍋物とか、甘辛く炊いてある魚にはめちゃくちゃ合うと思います」と返すと、「持ってきてくださいよ、ここに」「食べたーい」──最後の最後まで、食欲と直結したステージだった。

大橋彩香さん

🍶 この一杯、どうでした?

れいざん 純米吟醸(山村酒造/熊本・阿蘇)

「なんか熟成された感じがする」「長年寄り添ってくれる安心感のようなものを感じます」「おいしい! 好きだこれ」

山村酒造との乾杯
山村酒造との乾杯

「棺桶に入るまで」──久慈社長が涙した総括

6蔵の飲み比べを終えた大橋さんの総括は、飾らないぶん、まっすぐ蔵元たちに届いた。

「全部おいしいんですけど、やっぱりそれぞれに味の違いがあって、こだわりをすごく感じました。日本酒の知識に関しては、まだまだ浅いんですが、今回直接いろいろなことを教えていただいて、もっともっと勉強していきたいなと思いましたし──勉強せずとも楽しめておいしいのも日本酒の魅力だなと思っています。日本酒って全国に酒蔵さんがあって、それぞれに思いを込めて作った日本酒がある。もう、棺桶に入るまで日本酒はずっと飲んでいきたいなって思ってるので、ずっと勉強して、楽しんで、みんなで日本酒で笑顔になりたいなと感じました」

久慈社長は本気でうろたえていた。「棺桶に入るまで、ですって。もうどうしよう、涙出てきちゃいます、本当にもう。酒蔵冥利につきます」

質問コーナー──締めの乾杯は「キャンペー!」

5分の休憩を挟んだ後半は、事前に募った質問に答えるコーナー。ほろ酔い──本人いわく「ちょっとほろを通り過ぎてきたような気もするんですけど、大変楽しいです」という状態で、質問に次々と答えていった。

初めてお酒を飲んだときのエピソードを聞かれると、「二十歳になったとき、現場終わりでお世話になっているレーベルの皆さんとご飯を食べに行き、そこで乾杯しました。縁に塩がついてた気がする。ソルティドッグか何かかな」。しばらくは「たまに飲むくらい」で、「2022年ぐらいから、よりお酒をたしなむようになりました」という。

日本酒の好みは甘口か、辛口かという質問には、「辛かったりとか、あと結構、熟成された日本酒の方が好きかもしれないです。ピリッときたりとか、色もちょっと茶色かったり。つまみが進むな、みたいなところがあって」と、6蔵目の「れいざん」の感想ともつながる渋い好みを明かした。

今日つまみにしたい一品は──「野菜が大好きなので、めっちゃ塩分の効いたきゅうりとか、キャベツとか。それこそ炙り明太子とか。最近はお刺身も食べられるようになったので、マグロとカンパチ。特にカンパチがすごく好きです」

酔うとどうなるかには、「お酒を飲んで楽しくなってくると、口癖が『カラオケ行きたい』。『カラオケ行きたいっすね』って一生言ってます」。歌うのは「流行りの曲。カラオケランキングを上から歌ったり、今期のアニメの主題歌とか」──冒頭の7時間半カラオケ伝説に、きれいに回収された。

そして最後の質問は「もう一度、気持ちのいい乾杯のかけ声を」。グラスには石見銀山が「マシマシで」注がれ、大橋さんからひとつ提案があった。

「私、乾杯のこと『キャンペー』って言うことが多くて。『キャンペー』って言ってもらってもいいですか」

だから、超吟醸祭2026のフィナーレの乾杯は、こうなった。

「いい声と酒を浴びろ!」「キャンペー!」

「その時はまた一緒に、キャンペーしてください」

締めの挨拶で、大橋さんはこの日の時間をこう振り返った。

「皆さんの前でお酒を飲ませていただく機会って、そんなに多くはないので、とても新鮮でした。会場のお客さんと同じお酒を飲めるということで、普段よりも表情筋の緩んだお顔や、みんなでテーブルで乾杯している様子も見られて、すごく嬉しかったです。もっともっと日本酒を勉強して、また参加できるように頑張りたいなと思っていますので──その時はまた一緒に、キャンペーしてください」

大きな拍手に送られて大橋さんがステージを後にすると、久慈社長が2日間・全6部の幕を引いた。「日本酒も、このように皆さんに愛していただけるように頑張っていきますので、日本酒も応援してください」

ステージの最後は、2027年5月29日(土)・30日(日)に同じ東京ポートシティ竹芝で開催される新イベント「ハレサケ」の告知。テーマは「晴れの日に日本酒を」──就職・転職・卒業・独立、新しい門出を迎える人と日本酒で乾杯するお祭りだ。超吟醸祭2026の2日間はこうして幕を閉じ、竹芝のステージは来年5月、また日本酒と出会う場所になる。

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